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2006年4月28日 (金)

面白い話は抜きにして

現実の事例をプライバシーに十全な配慮をしながら、丹念かつ、大胆に取り上げ、峻烈にしかし、共感をもって書き上げた文章は、人を引き付ける。臨場感、ドラマ性、良い言い方ではないが覗き見、感動や涙への訴求。先行研究の成果と正面からは向き合うことはないかもしれないが、手法は十分に咀嚼され、場所・空間・関係性は姿を変え語られる。それはやはり新鮮で、別種の面白さがある。

比べて、先行研究に対し敬意をもって検討しつつも、予め平伏するのではなく、疵があると判断すれば臆せず批判する、しかし、あくまで論理構築上の話で生々しい事例はいっさい登場しない。そうした、若い研究者の論考はともすれば疎まれる傾向にあるような気がしてならない。

わかりやすければ何でもいい。面白ければいい。それだけではつまらないし、もっと言えば大変危ういことになってしまう。繰り返し繰り返し読んでも理解できない、しかし、何か大事なことを考えている、発言しようとしている。それは理解できる。だから、今一度読んでみる。

短絡的に、乱暴に、社会や世界を説明しようとしない。真摯に丁寧に事物を考え、説明しようとしている論者は尊敬されるべきだ。自分の能力の及ぶ範囲に自信が持てなければ、せめてそれぐらいには謙虚でありたい。

面白い話は全くないけれど、真っ当なことを考えている。難しいけれど大事なこと。Hさんの論考をそんな想いで行きつ戻りつ読んでいる。

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